2012-05

三千盛・秋の感謝祭/最終回・うなぎ魚弘にて

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多治見笠原町の酒蔵『三千盛』さんでの秋の感謝祭を十二分に満喫した我々一行4名は送迎バスに乗って多治見市街中心部へと向かっていた。バスに乗っている乗客は当然、蔵で大分お酒を飲んでいる方ばかりなので車内はかなりお酒臭いはずなのだが、我々自身もすっかり酔っているのからなのか嗅覚が麻痺しており一向に気になる事は無かった(笑)

バスは無事にJR多治見駅前に到着。まだ日も高いのでしばし我々は多治見市内を散策する事にした。仕事柄、建築物に詳しいエスパーさんと多治見市内に点在する宿場の古い町並みやこれまた市内に数多く残る昭和30年代くらいに建てられた建築物の数々について話をしながら歩くのは大変面白かった。一時間程歩き回り、本日の〆という事で皆で何か食べようという事になった。そこで市内に数多くある鰻屋さんの一つ『魚弘(うおひろ)』さんへと向かう。

多治見市内には古くから創業されている鰻屋さんが沢山ある。これはこの地方が陶磁器の町であるという事にも関係している。陶磁器作り(焼きもの)に従事する窯元の職人達は一度窯に火を入れると窯の状態を常時注意深く見守らねばならない。熱い窯焼き、これはかなりの重労働であると同時に集中力がいる仕事で並大抵の者では勤まらない。こうした窯元の職人達がスタミナを維持する為に好んで食べたとされるのが鰻であった。それでこの地方には鰻屋が多いという説がある。
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魚弘さんもそんな鰻屋さんのひとつで創業100年の老舗。本日立ち寄って来た幸兵衛窯の人間国宝 故・加藤卓男氏もこの店の常連客だったという。この魚弘さんは多治見市内の広小路商店街から一本入った筋、細い路地の奥の方にありちょっと分かりづらい。伊蔵もたまたま多治見市内を歩いていて見つけたお店であり、いつか訪れたいと思っていたのである。昔ながらの飾らないこの外観がいい。
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開店時間には少々早い時間ではあったが暖簾をくぐって声を掛けると快く店内へと入れて頂けた。入口を入って正面にはまっすぐ奥へと続く細く長い通路があり両側が座敷になっていた。“鰻の寝床”そのままという感じである。我々は一番奥の座敷へと通された。魚弘さんでは三河一色産の身の大きい鰻を仕入れており、鮮度と味へのかたくなまでのこだわりから注文を受けてから身を捌いて便長炭でじっくりと焼き上げるのだという。

座敷に腰を下ろして我々は落ち着いた。お品書きを見つつ四名とも「鰻丼」を注文する事に。ビールも同時に頼み(まだ飲むのか・笑)あと珍しい一品料理として『老茸(ろうじ)』と『へぼ』を注文してみた。鰻が焼きあがるまでそれら一品料理で楽しもうというのであった。
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『老茸(ろうじ)』というのはクロカワ茸(イボタケ科クロカワ属)という黒灰色キノコ。“幻の茸”といわれるほど天然のクロカワ茸は貴重で伊蔵もこれまでに二度程しか食べた事がない。そのまま七輪で焼いて生姜醤油で食べるのが最も美味い。味はほろ苦くて深い味わいで酒の肴として楽しむ人が多く、松茸よりも美味いという人もいるほどのキノコである。魚弘さんで出てきた老茸は焼いたものではなく塩漬けして保存が効くように加工したもののようで生姜と一緒に出てきた。味はやはり苦旨いという感じだった。

『へぼ』はこの東濃地方では一般的な郷土料理として知られている。まぁつまり誰でも分かるように言うならば『蜂の子(はちのこ)』である。海の無い山深い地方ではこうした昆虫食が重要なタンパク源として昔から食べられていた。蜂の幼虫を甘露煮や佃煮にしたり、御飯と一緒に炊き込んだ“へぼめし”などが一般的である。

三河地方から岐阜県南部の東濃地方、長野県などの道の駅や郷土物産を扱うお店に行けば“へぼの瓶詰”が珍味として普通に販売されているので見た事がある方も多いだろう。でもですね・・・あくまで古くから地元に住んでいる人で子供の頃から味に慣れ親しんでいる人か、よっぽどもの好きな人しか食べない(笑)。伊蔵も虫を食べるという事がどうも苦手なのでこれまで一度も食べた事が無かった。
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が、今日はメンバー四名それぞれがお酒の酔いの勢いもあって食べてみる事になったというわけ(笑)。魚弘さんで出された『へぼ』は佃煮系。小皿にひと盛り蜂の子が・・・。
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よく見ると(よく見えるように読者の方のために画像を魚眼化しました)蜂の幼虫の他に蛹、成虫になりかけたものまで入っておるようだ。酔っているので何の躊躇いもなく箸でひとつまみして口に入れて咀嚼してみると、意外や意外実に美味しい。佃煮になっているのでその味の方が勝っているといえばそうなのだが、しっかりと噛みしめてみると実にこやつらは甘い味がして美味いのであった。酒の肴としても十分いけるじゃないか。結局四名で綺麗に食べ尽くしてしまった。

老茸にしろへぼにしろいつも食べられるわけではなく季節や仕入れの状況によっては用意できない場合があるそうでこれら二つを食べることが出来たのは運が良かった。さて『へぼ』の話はここ辺でオシマイとしまして本題の魚弘さんの鰻丼へ話題を移そうとしましょうか。
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鰻丼と肝吸いが我々の座敷に運ばれてきた。丼物は松竹梅と3ランクに分かれており、この時は確か松を頼んだと思う。
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丼の蓋を開けてみると美味そうな鰻が!甘く香ばしい匂いが辺りに立ちこめた。早速食べてみると外はこんがりと焼けてパリパリとしているが身はあくまでふんわりと柔らかい。う~むこれは正しく美味しい鰻である。タレも文句なしに美味い。御飯と共にあっという間に平らげてしまった。
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伊  蔵『う~む・・アキラ実にうまかったなぁ~』
アキラ氏『そおっすねぇ~』
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勿論、桔梗屋さんとエスパーさんも同意見だったに違いない。少々重い腹を抱えるようにしてうなぎ魚弘さんを後にした我々。腹ごなしに多治見駅まで歩いて行った。考えてみれば朝から日が暮れるまで飲みっぱなしの一日であった。また次回の三千盛春の感謝祭にも参加しようと約束し、多治見駅でメンバー達と別れ無事散会となった。

帰りの列車内では酔いも手伝ってやはり寝てしまいました・・・(苦笑)<完>

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◆『うなぎ 魚弘(うおひろ)』
・住所:岐阜県多治見市広小路2丁目48番地
・電話番号:0572-22-4516
・営業時間:11:30~14:00 17:00~20:00 ランチ営業、日曜営業
・定休日:木曜日、第一、第三水曜日
・ホームページ:http://www.uohiro.net/html/

三千盛・秋の感謝祭/その3・感謝祭会場にて

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やっと記事の本題に辿り着きました・・・長い間お待たせしました。多治見市市之倉町内から桔梗屋さん、エスパーさん、アキラ氏、伊蔵の四名を乗せたタクシーは一路、三千盛さんのある同市笠原町へと向かっていた。市之倉町と笠原町は山を挟んで隣合っているので移動にはそんなに時間は掛からず程なく三千盛さんの蔵の玄関先に到着した。
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時間はすでにお昼近くだった為、メンバーのみんなも腹を空かしているようだ。勿論お酒の方も楽しみにしている訳だが(笑)。
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感謝祭のいつもの会場である旧蔵敷地内はすでに多くの酒を愛する人々でごったがえしていた。いつも思うがこの人出の迫力は凄い。旧蔵の門の傍で入場料500円を払い、三千盛のロゴ入り利き猪口を頂くと同時に我々は試飲会場へ急ぎ足で向かった(別に急ぐ必要は無いのだが身体が酒を欲していたのである)。
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蔵への途中には広場があり、入場者がめいめいお酒の赤いケースを椅子やテーブル代わりにして飲んでいる。この赤いケースを人数分確保するのはよほど運が良い場合を除いて奪取するのは至難の技に近く、このケースを手に入れゆっくりと腰を据えてお酒を楽しむには、早い時間に蔵入りして確保しておくしか手が無い。次回の春の感謝祭に向けての我々の課題になったのは言うまでもない。
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蔵の入口にはいつも今回試飲可能なお酒の紹介がされている。10種類程のお酒が用意されていた。
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“辛口”の日本酒として名の通っている三千盛。歴史もそれなりに古く、蔵自体も大きいので造っているお酒の種類も様々。こうした多種のお酒を入場料500円のみで何度も試飲出来るのは酒好きの我々にとっては嬉しい限り。
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メンバー全員、好みのお酒を猪口に一杯入れてまずは乾杯。猪口に鼻を近付けて香りを楽しんでからちょっと口に含みお酒を舌で転がし、その後くいっと飲み干すと胃の腑が熱を持ちポカポカとしてくる。飲んだ後に鼻から息を抜き香りを存分に感じるのも良い。

『う~ん・・・いいねぇ~・・』

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メンバーの全員がみんな『う~ん・・・』状態になってしまうのが面白かった。一杯目を飲み干すとメンバー全員はそれぞれ単独行動に走りはじめひっきりなしに試飲会場へ行ったり来たり(笑)。何番のあのお酒がええっすよ。俺は何番の酒だと意見を交わしつつ飲むのもこういった蔵開きでの楽しみの一つであろう。
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蔵内では今回もイベントが開かれていた。二胡の演奏会やフラワーアレンジメント実演、いつも蔵の端で筆をふるう書の先生の実演などが今回の催し物であった。
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書の先生はこの三千盛のお酒のラベルの書も手掛けられている方で毎回感謝祭には参加しておられる。
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思いつくまま芸術的な書をしたためる先生は素晴らしい。もちろんお客さんの要望に合わせても書いてくれる。
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この書の先生のブースの傍らを拠点にして我々は会場内を歩き回っていた。すると桔梗屋さん、エスパー氏が広場に出店している屋台から様々な食べ物を供給してきてくれた。
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たこ焼き、どて煮、豚汁、ねぎま串、川魚の塩焼などなど。ちょっと食い過ぎ気味だがどれもこれも美味かった。特に豚汁は酒粕を使っているらしく非常に美味しかった。食が進めば酒が進む、酒が進めば食が進むといった無限ループ状態に我々は陥ってしまったようだった。昔、「美味いものを食べると辛口の菊正が欲しくなる。辛口の菊正を飲むとまた美味いものが食べたくなる・・・」という菊正宗のコマーシャルがあったが、まるでそれと同じ状態だ。
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蔵の前の広場では上記の食べ物の他にも手打ち蕎麦、五平餅やトンチャン、各種串物、燻製チーズ等のおつまみ系を販売するお店があり、酒の肴には事欠かないようになっている。また、用意のよい参加者は肴を持参してくる方までみえる。
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この三千盛の秋の感謝祭に来て最も嬉しかったのが前回の春の感謝祭でお見かけした方々との再会であった。
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あ、あの人も前いたな、この人もいたと次々に会場内で発見出来るのだが酔いの初めは照れてなかなか声を掛けれなかったものの、ほろ酔い時になってくるとお互い気軽に声を掛け合えるのが酔っぱらいのいいところ。
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この感謝祭に来るとホントに毎回思うのだが“人類は皆兄弟”もしくは“酔っぱらい万歳”という感じなのだ。知らない人に思い切って声を掛けるとすぐに皆打ち解けて友達になってしまう。実に平和な場がここにはあるのである。
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旧蔵の入口の斜向かいには精米所があり、ここも解放されていて見学が可能だった。そこには巨大な精米機が四台並んでいた。この精米機で酒の原料米を時間をかけて徹底的に磨きあげるのである。
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三千盛さんで造られる酒はすべての製品が高精白の為、一旦精米の作業が始まると大変忙しく24時間休むことなく精米機が回り続けるという。磨き抜かれた米は磨く前の半分以下の大きさの小さな玉のようになっている。それはうっすらと向こう側が透けてみえてさながら宝石のような輝きと美しさがある。
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今回もお酒は勿論、いろいろなものを食べて実に楽しい感謝祭だった。三千盛さんいつもありがとうございます!桔梗屋さん、今回初めてメンバーに加わったエスパー氏、アキラ氏もそれぞれ大満足のようだった。
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帰りの送迎バスをしばし待ち、我々メンバーは多治見市街方面へと引き上げたのであった。<つづく>

三千盛・秋の感謝祭/その2・幸兵衛窯見学

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『市之倉さかづき美術館』から目指す『幸兵衛窯』までは徒歩5分程。山の斜面にその窯元はある。
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この『幸兵衛窯』は1804年に初代・加藤幸兵衛により開窯されたもので市之倉町で最も古い歴史を誇る。また江戸城本丸、西御丸へ染付食器を納める御用窯の指定も受けていた由緒ある窯元である。
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五代幸兵衛は中国陶磁をはじめ幅広い技法を駆使し昭和48年には岐阜県重要無形文化財保持者の認定を受けるなど、幸兵衛窯の中興の祖といわれる。その息子である六代加藤卓男氏は、古代ペルシャの陶器の独特な造形と斬新な色彩に魅せられ、西アジアでの発掘と研究に没頭、ラスター彩の復元、青釉、三彩、ペルシャ色絵など陶磁器の世界で異民族文化と日本文化の融合に見事に成功した。また宮内庁正倉院からの委嘱を受けて正倉院三彩の復元制作も行い納入している。
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これらの功績によって加藤卓男氏は平成7年に国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けた(2005年没)当代は七代加藤幸兵衛氏が幸兵衛窯を引き継いでいる。その息子さんである加藤亮太郎氏も若いながら次々と作品を発表、個展やグループ展等を行っている。
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なだらかな坂道を登った場所に『幸兵衛窯』の施設はあった。人間国宝加藤卓男氏の作品を展示する真新しい本館と福井県の大野市から移築したという築200年を経た建物内には古陶磁資料館、工芸館、サロン壷中堂(喫茶室)などがある。さすがに市之倉の町の中で一番大きな窯だけあり立派な施設群であった。
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まず我々は本館へと向かった。中へ入ると物静かな女の方が各施設の紹介、展示品についての概略をこれまた物静かにかつ丁寧に説明してくれた。彼女もこの幸兵衛窯で陶器作りをしている方なのだろうか?と頭の片隅にそういった考えが浮かび、彼女ならどんな作品を作るのであろうか・・・などと妄想がどんどん膨らんでしまうのだった。

人間国宝・加藤卓男氏は古代ペルシャの陶器に魅せられその研究に夢中になったという事は先に書いた。その夢中、没頭ぶりが分かる資料の数々もこの本館には展示されている。中でも中東の古代の窯跡、遺跡などを見て回った際の記録ノートは素晴らしい。万年筆で書かれているが文章だけでなく陶磁器のスケッチも非常に細かく描かれてあり、その研究熱心さぶりがひしひしと伝わってくる。古代ペルシャ陶器の何が彼をここまで引きつけたんだろうか?人間が生活するにおいて物を入れる器という存在は無くてはならない。その歴史は非常に古く人類文化発祥の時代まで遡ることが出来る。四大文明の時代、それぞれの文化圏ですでに建築用材として日干し煉瓦やタイル、多くの壷などが造られていた。

時代が下って通商目的で発達したシルクロードによって東西の文化、文物の流通が容易となると各文化圏独自の陶磁器の技法や色彩やデザインが影響し融合する事になり、陶磁器文化は一層華やかなものになった。日本の陶磁器は中国大陸、朝鮮半島を経て伝わっただけにその文化的影響が色濃く出ているが、奈良の正倉院御物の中には遠くペルシャの影響を受けている物もあったりする。

シルクロードの終着点ともいえる極東の島国日本の代々続く陶芸家の家に生まれ落ちた加藤卓男氏はある時、その陶磁器文化の西端の文化がどういうものなのか?という事にフト興味を抱いたのかもしれない。ペルシャの遺跡で日本の陶磁器とはまた違った繊細な絵付けや意匠に出会った彼の心の中に何かが弾けた。そこで極東の陶磁器文化と中東の陶磁器文化の融合というテーマを思いついたのかもしれない。そういった点では古い伝統をばかりを重んじるであろう日本の陶磁器文化の世界の中で加藤卓男氏の東西文化融合という考え方というのは非常に柔軟で壮大な構想であったという事がいえるかもしれない。そんな彼の代表作の展示物の数々を見ているとやはりどの作品もエキゾチックな雰囲気が出ているのであった。この幸兵衛窯本館での展示は本当に素晴らしかった。
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次に併設の古陶磁資料館へ。先にも書いた築200年を経ている古民家を利用した展示館である。この建物は非常に贅沢な木材が使われており重厚でなかなか素晴らしいものだ。建築という職業に携わっている我々メンバーのひとりであるエスパー氏もこの古民家には興味津々のようであった(笑)。古民家の中はかなり寒かったが展示物の数々には目を見張るものがあった。
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古陶磁資料館、工芸館を一通り回って古民家の裏手へ足を運んでみる事に。煉瓦造りの煙突と紅葉が相まって美しい。
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そこにはのぼり窯というのだろうか桃山様式の半地上式穴窯が山の斜面に築かれていた。
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現在の工房は別の場所にあるようだが、今でも年に一、二度はこの窯で焼き物が作られているらしい。是非実際にこの穴窯が稼働している様を見てみたいものだ。
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たまたま『市之倉さかづき美術館』の見学のついでに訪れた『幸兵衛窯』であったが陶器にさほど詳しくない方でも十分に楽しめる施設であった。また自分好みの陶器を探してみるのも面白いだろう。<つづく>

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◆幸兵衛窯(こうべいがま)
・住所:岐阜県多治見市市之倉町4-124
・電話:0572-22-3821
・見学時間
 平日/第1・3土曜日午前9時〜午後5時
 日祝日/第2・4土曜日午前10時〜午後5時
 年末年始、お盆、展示入替期間のみ休館
・入場料:一般300円、大高生150円
・ホームページ:http://www.koubei-gama.co.jp/

久しぶりの更新?です・・・

毎日の忙しさにかまけていたらブログの更新がかなり疎かになってしまいました・・・。
ブログの記事は多治見市笠原町の酒蔵『三千盛』さんの秋の感謝祭で止まっておりますが、なんだかんだ更新を怠っているうちに春の感謝祭が目前(2012年3月25日)に迫ってきてしまいました。ヤバい・・。

書く事は沢山あるのですがなかなか更新ができずに申し訳ございませぬ。


三千盛・秋の感謝祭/その1・市之倉さかづき美術館

2011年11月27日の日曜日、春に引き続き多治見市笠原町にある酒蔵『三千盛』の秋の感謝祭に出掛けて来た。このイベントに行こうと誘ってきたのは例によって日本酒好きな友人“桔梗屋さん”である。でもまぁ前回の春の感謝祭の際にも『秋のイベントも是非!』なんて言っていたので今回のお誘いは必然的なものであった。

参加メンバーは春に引き続き桔梗屋さん、アキラ氏そして前回は参加できなかったエスパー氏も今回初参加。伊蔵を加えて四名での行動となった。例によって伊蔵は前日の26日に多治見入りして一泊し、多治見市内を徘徊する計画(笑)。27日当日にメンバー達と合流する事になっていた。今回は酒蔵へ向かう前に多治見市市之倉町の『市之倉さかづき美術館』にも立ち寄る事になっているのでこちらも楽しみである。
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11月27日当日多治見市内の宿で伊蔵は朝7時に起床。お盆にこの町を訪れた時はとても暑かったがさすがにこの時期は肌寒い。宿の一階フロアの喫茶店で朝食をゆっくりとる。メンバー達とは9時45分にJR多治見駅で合流の約束になっているのでその時間までひんやりと冷えた多治見市内を散歩してみることにする。
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だがそうはいったものの多治見市内はお盆に訪れた際にそのほとんどを歩いて回ってしまっていた為、これといって見るものも無かった。ただ今夕にはメンバー達と市内のどこかで食事をするであろうから前もって市内のいくつかの飲食店をピックアップしていた為、歩き回りながら場所を確認はしておいた。
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◆うなぎ魚弘(うおひろ)/市内でも老舗の鰻屋のひとつ
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◆焼き鳥だいき/多治見で焼き鳥といえばココだという
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◆梵天丸/たまたま宿のそばに新規オープンしていた東北郷土料理を食べさせる店
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早朝の街中は歩く人もいなかった。が猫はいた(笑)。結局市内を30~40分程歩き回るとメンバーとの集合時間にちょうど間に合う時刻になった。

集合場所のJR多治見駅に行ってみると改札口辺りにエスパー氏と桔梗屋さんの姿を発見し合流。すぐにアキラ氏も改札口からやってきて時間通りにメンバー全員が集合出来た。早速駅南口のロータリーでタクシーをつかまえて最初の目的地『市之倉さかずき美術館』へと向かう。

多治見市市之倉町は美濃焼の陶産地の中でも精緻で高水準の盃や煎茶器を産した場所として知られており、明治期には全国盃生産の大部分をこの場所で作っていたという陶器の町である。現在でも数多くの窯元がこの町にはあり多くの観光客が訪れる。タクシーで山の中の道を約20分も走ると四方を山に囲まれた谷の底のような場所に市之倉の町が見えてきた。『市之倉さかづき美術館』はその町の中心部にある。
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伊蔵はこれといって特別に陶磁器に関して詳しい訳ではない。ただ陶磁器の中でも面白味のある造形や色彩の施されたものに少なからず興味は引かれる。またそうした良い仕事の陶磁器の上に盛りつけされた料理を食する際や注がれた酒を飲む場合には不思議と旨く感じるところがあるっといった極々普通の方々が思われる程度の知識しかない。まぁあとしいて言えば小さい頃から土いじりは好きな方であるといったところか(笑)
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タクシーを降り『市之倉さかづき美術館』の建物前へ我々メンバー四名は歩いていった。美術館の建物は切妻屋根に白漆喰の外壁のなかなか立派なものでまるで巨大な蔵が立ち並んでいるような外観。ここ『市之倉さかづき美術館』では幕末、明治~昭和にかけて作られた盃の数々の展示に加え、陶磁器、酒器にまつわる企画展示や地元市之倉に所縁のある人間国宝・巨匠8名の作品を常設展示している。また若手の陶芸作家が作った器などを手に入れる事も出来るミュージアムショップや作陶・絵付け体験なども勿論楽しめるようになっている。美術館横には薪の窯で焼く手作りのピザが食べられるお店も併設されている(これは一度食べてみたい)。
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この日美術館で行われていた企画展示は『中国古代銅鏡展』。主に隋・唐時代もしくはそれ以前の時代に中国で造られた銅鏡の展示であった。残念ながら館内は撮影が禁止なのでその意匠の素晴らしさと精緻な細工の仕上がりをここで紹介は出来ないがとにかく見事なものだった。ひょっとしたらこうした手の込んだ鋳造技術は現代では失われているかもしれず、当時の中国の技術力の高さにはやはり感服せざるを得ない。

メインの展示である盃もよくこれだけいろいろな種類があるものだなという位に沢山の盃が並べられていた。ただ単に盃とはいってもその時代時代によってその形や大きさ等が異なっているのが面白い。絵付けや細工等、遊び心が感じられる盃のコレクションもありかなりじっくりと見入ってしまった。これほどバリエーション豊富な盃が一堂に目にする事が出来るのも陶器の町『市之倉』ならではだろう。

また人間国宝・巨匠といわれる作家達の展示コーナーも圧巻であった。こういう作家の方々が造る陶磁器というものはやはり何かが違う。どこが普通の作家と違うのだといわれても困るのだが、器そのものから発する何か“凄み”のようなものがあり見る者にこれが強烈に訴えてくるのである。中には『なんじゃこれ??』って作品もあるのだがそれすら何かを訴えてくる。決して素人が真似して造れるものではない。

陶磁器というものは土をこね、形を整え上薬を塗り絵付けをして窯で焼き上がるまで良いものが出来るかどうか分からないところがある。土の成分やこね方、気温や上薬の配合、窯での焼き方や温度によってその出来は良くもなるし悪くもなる。結構偶然の産物によって傑作が生まれるという事も少なくない実に奥が深い世界なのだ。巨匠といわれる人は長年の修行と経験によってこうした配合については熟知してはいるのだろうが自分が思ったようにはなかなか作品は仕上がらなかったに違いなく、何度も試行錯誤しながらこの大作を造り上げた事は想像出来る。そうした事を考えるとこれら巨匠達の作品は是非一見の価値があると思う。

美術館脇のミュージアムショップにも行ってみた。若手作家の斬新な作品の数々が販売されておりこちらもなかなか。ここは撮影可能ではないのか?と思い撮影してたら見事に怒られちゃいました(悲)こうして『市之倉さかづき美術館』の見学は終わり、次に我々は美術館から歩いてもさほどかからない場所にある人間国宝・加藤卓男氏を生んだ窯元『幸兵衛窯(こうべいかま)』へと向かう事になった。

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◆市之倉さかづき美術館
・住所:岐阜県多治見市市之倉町6-30-1
・電話番号:0572-24-5911
・開館時間:午前10時~午後5時(入館は4時半まで)
・休館日:火曜日、年末年始
・入館料:一般400円、大、高校生200円、中学生以下無料
     団体20名以上は一律100円引

・共通入館料(市之倉さかづき美術館・幸兵衛窯)
 一般600円、大、高校生300円、中学生以下無料
 団体20名以上は一律100円引き
・ホームページ/http://www.sakazuki.or.jp/


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プロフィール

伊蔵

Author:伊蔵
伊蔵と申します。
幻の焼酎から名を頂きました。
お酒・一人旅・自転車・麺類好き・歴史・読書・雑学・ネット・路地裏散策・廃道・街道・地図マニア。某チャットの住人。血液型:B型

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