週末の土曜日、伊蔵はかねてからtakeさんから『鮎』入荷の話を聞いていた。takeさんは一週間後には日本を離れハワイに出掛けてしまう。その為takeさん自身も今の内に和食を食べためておかねばならない事もあって今が旬の『鮎』を用意するから伊蔵君も食べに来なさい!という事であった。そういえば昨年もtakeさんのお店で『鮎の会』を開き、鮎をご馳走になった事を思い出した。
午後七時過ぎにtakeさんの店の外に立ち木戸をノックする。ガチャリと鍵が開けられ中に入ると意外な先客がカウンターに座っているではないかっ!!
『伊蔵さんひさしぶり・・』
カウンターに座り第一声を発した小さなその女の子は『R嬢』であった。『R嬢』と再会するのは以前二月にtakeさんの店でモツ鍋を一緒に食べて以来四ヶ月振りの事である。このサプライズゲストを用意して伊蔵を驚かせる事に成功したtakeさんは得意気だった(笑)久しぶりに顔を見る『R嬢』はかなり痩せて見えた為、その事を指摘すると数カ月に渡って様々な病にかかって弱っていたのだという・・う〜むいかんいかん早く身体を元に戻しなさい!と伊蔵は申し上げた。しかし驚いたのはそれだけではなかったのである。
『伊蔵さん・・私、七夕の今日入籍したの・・』
!Σ( ̄□ ̄;)えええええ!?マジですか??伊蔵は驚きを隠せなかった。しかし考えてみると彼女も先月の六月に27歳になったのである。全然入籍したとしても可笑しくはない。伊蔵と初めて会った時『R嬢』はまだ二十歳を少し越えた位だった・・・彼女の妹であるY嬢と一緒に蕎麦を食べに行ったのがついこの間のように記憶に残っている。月日の経つのは本当に早い。伊蔵も歳をとるはずである。
『そりゃ〜おめでとう!早速お祝いの乾杯だ!』
とは言ったものの七夕入籍と聞いて伊蔵は心の片隅に発生した少しばかりの寂しさを隠せなかったが、takeさんと『R嬢』とともにお祝いの乾杯をしたのだった。R嬢が言っていたのだが七夕に入籍する人が意外に多かったとの事。今年は特に2007年7月7日と『7』が三つ並ぶ事からこの日を向けてブライダル業界関係の仕事が忙しくなっているというニュースを伊蔵は思い出した。

考えてみれば『R嬢』がこのtakeさんの店に初めて訪れた時は本当に大人しい子だったが何度か訪れる内に心地よい場所となったのだろう、最近ではぺらぺらとよく喋る。彼女も一人でお酒を飲みたい時はここだと決めているようだ。

脂の乗った『カツオのタタキ』と日本酒を頂きながら『R嬢』の話を聞く時間はとても楽しかった。旦那さんの在所である北海道の話や、田舎ではインターネットが無くても独自の“噂話のネットワーク”が存在していて何か変わった事が起こると凄まじい勢いで噂話が広がってしまうという話、名古屋人と北海道人の地域性による性格の違いや考え方の違い等の話はとても面白かった。
と、そこへtakeさんの高校時代の同級生であるS氏が来店。『R嬢』の入籍話を聞くと自動的にまた全員で乾杯となってしまった。S氏と『R嬢』も会うのは久しぶりでお互い顔を合わせる事が出来てとても楽しそうだった。

さて“旬の川魚”である『鮎』の登場だ!伊蔵が鮎を食べるのは昨年飛騨の旅に出掛けてとき以来。う〜んたまらん・・・今日の為にtakeさんがわざわざ仕入れてくれたのだ。

う〜む見るからに美しい川魚だ・・思わず日本酒を所望(笑)うやうやしくtakeさんは鮎を取り上げ串を打ち始め、打ち終わると鮎の体表やヒレに“化粧塩”を施していた。これを施す事によってヒレが焼け落ちないようになるのと、何より見た目が旨そうに仕上がるのだ。これが終わるといよいよ炭火で焼く。

これは見ているだけでも(・∀・)イイ!こんがりと焼けていく鮎を肴に伊蔵は日本酒『杜氏の華』を飲んでいた。と、またまた木戸をホトホトと叩く音が!戸を開けるとアキラ氏ではないか!自動的にまた全員でお祝い乾杯となってしまった(笑)『R嬢』もまわりはみんなオジサンながらも祝ってもらってとても喜んでいた。

鮎もいい感じに焼き上がって来た。表面の塩が白く浮いて来てとても旨そうだ。そして・・・

デンッ!お皿の上に鮎が泳いで来た(笑)伊蔵はお腹の部分を切り開き、はらわたの苦い部分を最初に頂いてみた。(´Д`) ああぁぁあ・・・う、うみゃ〜よこれ。苦さに日本酒がよく合う。はらわたを十分に味わった後、伊蔵は鮎を頭からかぶりつき身の程よい塩辛さを楽しんだ。川魚はやっぱり伊蔵の大好物だと改めて認識した。鮎の後にtakeさんが用意してくれたのは『鯨の赤身焼き』。

takeさん、S氏、アキラ氏、伊蔵位の世代だと鯨を子供の頃に給食で食べた経験があるが『R嬢』の年代になると味わった事がないだろう。噛めば噛む程に深い味わいが染み出して来る鯨肉はこれまた美味しい。

その後は『トリ貝のしゃぶしゃぶ』。トリ貝は最近takeさんのお店では頻繁に登場する食材である。刺身で食べるのも勿論美味しいが、しゃぶしゃぶにすると身の甘味が刺身で食べるよりもより引き立ってまたこれがいいのである。歯応えもコリコリとして楽しい。あっさりしたダシ汁にブツ切りにしたネギ、エノキ、シメジなどを入れて味わうトリ貝のしゃぶしゃぶは海のエキスと山のエキスが鍋の中で複雑に混じり合ってとても美味しかった。特にネギがいい味を出していた。

最後に『大アサリ焼き』。こいつもたまらぬ。ただ焼いて醤油を垂らすだけでなぜこんなに旨いのだろう。アサリに感謝である。

アサリファイヤー!!徐々に店内にアサリの磯の香りが漂い始めて来た。食欲を掻き立てる香りである。

焼き上がった大アサリ。今日の伊蔵はなぜか日本酒が進んで仕方が無い(笑)大アサリという名前だけあって身もたっぷり。味わい甲斐があるというものだ。『R嬢』も今日は楽しかったのだろう時間を忘れて飲んで食べている感じだった。
最後に『R嬢』入籍おめでとう!みんなに祝ってもらえて良かったね。今が旬の『鮎』を味わえた事も伊蔵は嬉しかったけど、今の旬はまさに『R嬢』“あなた自身”です。
いつまでもいつまでもお幸せに。